ノーベル賞学者も失敗したヘッジファンド
ヘッジファンドという言葉がひところ新聞紙上で躍りました。
平成一〇年(一九九八年)九月にアメリカの有力なヘッジファンド「ロングタームーキャピタルーマネジメント(LTCM)」が三〇億ドルもの損失を出し、破綻寸前に追い込まれたからです。このLTCMのヘッジファンドは、その三年前の九五年、銀行金利が五%内外のころ四三%、九六年にも四一%の配当を行なったので大変な人気を呼びました。
アメリカの有力銀行やスイスの大銀行、イタリアの中央銀行まで投資していたといわれます。 ヘッジファンドというのは、一〇〇人以下の、法人や大口個人投資家を対象とする私募ファンドで、LTCMの場合、個人投資の資格は資金五〇〇万ドル(約六億円)以上の保有者に限られていました。 ヘッジファンドの運用の基本は、その名のとおりベ^^’/^。と。ファンド”の組み合わせで、分散投資と裁定取引を中心に安定的な運用を行なうというものです。しyかし裁定取引では、短期的には大きな運用益帆望めないので、これで巨額の利益を得るためには、大量の資金と大量の取引を必要とします。
そこでLTCMは集めた資金と運用実績を担保に銀行から大量の資金を借り出し、これを元手に少額の証拠金で大きな取引ができるレバレッジ(テコ)取引を行ないました。 このテコ取引は、LTCMの場合、ます、集めた資金(約六〇〇〇億円)の二六倍の銀行借入れを行ない、この資金でさらにI〇倍近い証拠金取引(全体で二五〇倍のテコ取引)を行なったのです。
通常のヘッジファンドがI〇~二〇倍、多くて五〇倍のテコ取引ですから、無謀というほかありません。 さらに彼らは連戦連勝に気をよくして、ファンドーマネジャーたちも自分たちの成功報酬(運用益の二〇%)目当てに短期決戦で、ロングータームならぬショートータームの集中投資を行ない、基本の分散投資を怠りました。それで失敗したのですから損失は莫大でした。
もう一つ、このLTCMのヘッジファンドの特徴は、一九九七年のノーベル賞学者ロバートーマートンとマイロンーショールズの二人を経営陣に組み入れて資金集めをしたことです。 この二人のノーベル賞受賞論文は「オプション取引の価格形成理論」というもので、精緻な計量モデルによる金融工学的理論で多くの信頼を集めました。しかし現実の、突発的な事象を織り込む国債(実態は金利)などの相場の動きは、ノーベル賞学者の理論をもってしても通用しませんでした。